2012/01/11

北京故宮博物院200選

東京国立博物館で開催中の『北京故宮博物院200選』展に行ってきました。

毎年、お正月の3が日にはトーハクの“博物館に初もうで”に行っているのですが、今年はちょっと出遅れて4日に詣でてきました。Twitterでは『北京故宮博物院200選』の目玉の「清明上河図」を観るだけで210分待ちとか朝7時前から並んでいるとか情報が流れていて、そんな長時間並ぶのは嫌だし、「清明上河図」は諦めようかななどと気弱なことも考えていました。

「清明上河図」はまさに“神品”と呼ばれるだけあって、中国の一級文物(日本でいう国宝)の中でも中国美術史上屈指の名画といわれており、中国でも滅多にお目にかかることのできない作品。上海で特別公開されたときは夜中まで行列ができたなんて話も聞きます。やはり「清明上河図」を観ずして、『北京故宮博物院展』は語れないなと思い、その日は開門50分前にトーハクへ。この時点で、行列は50人ぐらいだったでしょうか。9時を過ぎた頃には、あれよあれよという間に行列が伸び、開門の時間には黒門の先の先の方まで行列ができていました。

お目当ての「清明上河図」は第一会場の一番最後のコーナーにあります。「清明上河図」を観ない人はそのまま第一会場の最初から観ていくわけですが、「清明上河図」を観る人はここでまた列に並ぶ必要があるようです。自分は並ぶことなくそのまま観ることができたので、ラッキーでしたが。

一級文物「清明上河図巻」(部分)
張択端筆 北宋時代・12世紀  [展示期間:2012年1月2日(月・休)~24日(火)]

「清明上河図」は北宋時代(12世紀)の作品。日本でいうと平安時代末期の頃でしょうか。作者は張択端という人で、絵は北宋の都・開封の川の流れに沿って、市民の生活が描かれています。約5メートルの絵巻の中に登場する人物は773人ともいわれ、庶民の日常の様子が克明に描写されています。

一級文物「清明上河図巻」(部分)
張択端筆 北宋時代・12世紀 [展示期間:2012年1月2日(月・休)~24日(火)]

とはいえ、実際には警備員の「立ち止まらないでください」 の連呼でおちおちとゆっくり観ていられず、それでもところどころ単眼鏡で覗き込んで観ていましたが、5分やそこらの鑑賞では「清明上河図」の全貌を堪能することは不可能でした。それでも筆の微細な線のタッチや人々の生き生きとした表情は実物を見ないと分からないものだと思います。

一級文物「魯大司徒鋪」
春秋時代・前7~前6世紀

「清明上河図」を観終わった後は再び第一会場の入り口に戻り、頭から鑑賞。第1部は「故宮博物院の至宝 ― 皇帝たちの名品 ―」。ここでは明時代の永楽帝から清時代の宣統帝溥儀までの歴代の皇帝たちの数々のコレクションが展示されています。中国ということで書跡類も多く、そのほか紀元前にまでさかのぼる青銅器や玉器、また陶磁器や漆器といった工芸品も多く陳列されています。

 一級文物「水村図巻」(部分)
趙孟 元時代・大徳6年(1302)

このコーナーに並んでいるものはそのほとんどが一級文物。書跡はもちろん、絵画も名品ぞろいで、その後の文人画に多大な影響を与えた趙孟頫(ちょうもふ)の「水村図巻」は中国山水画史上の最高傑作ともいわれるだけあり、思わず見入ってしまう素晴らしさ。長江の雄大な風景と険峻な山々を描いた趙芾(ちょうふつ)の「長江万里図巻」もその見事なまでの水墨画の世界に深い感動を覚えました。

「大威徳金剛(ヤマーンタカ)立像」
清時代・18世紀

第2部は「清朝宮廷の文化の精粋 ― 多文化のなかの共生 ―」で、ここでは「清朝の礼制文化 ― 悠久の伝統 ―」「清朝の文化事業 ― 伝統と継承の再編 ―」「清朝の宗教 ― チベット仏教がつなぐ世界 ―」「清朝の国際交流 ― 周辺国との交流 ―」とさらに4つの章に分かれています。

清朝が最も安定し、文化的にも成熟期にあったという乾隆帝(在位1735〜96)時代の美術工芸の名品を中心に、清朝の歴史的背景や文化・宗教的背景が分かるような展示内容になっています。片やチベット仏教を信仰し、片や西洋との交流にも積極的で、当時の中国文化の豊かさが伝わってくるようです。

一級文物「乾隆帝大閲像軸」
清時代・18世紀

ここでの見ものは、一級文物の「康熙帝南巡図巻」じゃないでしょうか。康熙帝(在位1661-1722)が中国南部を巡視した際の様子を描いた絵巻で、全12巻の内、11巻と12巻が来日しています。展示されている2巻だけでも合わせて20メートル強もあるという長大な絵巻で、その緻密な描写は目を見張るものがあり、先の「清明上河図巻」と勝るとも劣らない素晴らしさです。この「>康熙帝南巡図巻」は9巻が現存していて、内5巻が故宮博物院にあり、パリのギメ東洋美術館とアメリカのメトロポリタン美術館に2巻ずつ収蔵されているそうです。

一級文物「康熙帝南巡図巻 第11巻」(部分)
王翬等 清時代・康熙30年(1691)

中国の故宮博物院に行っても、なかなかお目にかかれない名品揃い。「清明上河図」を観るのはちょっと覚悟がいりますが、「清明上河図」以外にも見どころの多い展覧会だと思います。


【北京故宮博物院200選】
2012年2月19日(日)まで
東京国立博物館にて

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