2012/02/01

フェルメールからのラブレター展

先日、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「フェルメールからのラブレター展」に行ってきました。

今回の展覧会は、フェルメールの「手紙を読む青衣の女」をはじめ、「手紙を書く女」、「手紙を書く女と召使い」を中心に、コミュニケーションや絆といったものをテーマにした同時代のオランダの画家たちの作品を併せて展示しています。

フェルメールの三作品が“手紙”というキーワードをテーマに描かれた作品ということで、それを膨らませた企画展といえますが、同時代のオランダ絵画も充実した作品が並び、面白く拝見しました。

一度に複数のフェルメール作品が公開される展覧会としては、2008年に7作品が集まり、東京都美術館で開かれた『フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち』以来のこと。今年は本展を含め、3つの展覧会で6作品が日本に上陸する“フェルメール・イヤー”ということで話題になっていることもあり、その幕開けを飾る展覧会として、さぞや混雑しているんだろうと思っていたのですが、自分が行った日は休日だったにもかかわらず、それほど混雑しておらず、幸いにも並ばずに入ることができました。

ヤン・ステーン「生徒にお仕置きをする教師」
1663-65年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

会場に入ると、まずは「人々のやりとり - しぐさ、視線、表情」というテーマで、仕事や余暇を楽しむ民衆の日常の姿を描いた風俗画が展示されています。一見、何気ない家庭の様子や日常の風景であっても、描き出される部屋の様子、服装の生地やデザイン、表情や視線等から、その家庭の暮らしぶりや男女の関係など、いろんな意味が絵画に込めていたということを面白く感じました。風俗画で評価の高いヤン・ステーンや、フェルメールと同時代にデルフトで活躍したピーテル・デ・ホーホらの作品が展示されています。

次のコーナーは「家族の絆、家族の空間」と題し、風俗画の中でも家族・家庭を描いたもの、また家事に勤しむ女性、酒を飲み騒ぐ老人や若者たちなどを描いた作品、道徳的な色合いの濃い作品などが取り上げられていました。

ピーテル・デ・ホーホ「中庭にいる女と子供」
1658-60年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

会場のちょうど真ん中あたりのコーナーは「手紙を通したコミュニケーション」ということで、フェルメールの三作品を独立したスペースに飾り、同じテーマに関連した作品を反対側の壁側に展示していました。フェルメールの作品は小間に間隔をおいて飾られ、ゆったりとした空間で拝見することができます。

フェルメール作品のうち、「手紙を書く青衣の女」は日本初公開、「手紙を書く女」は13年ぶり、「手紙を書く女と召使」は3年ぶりの日本公開となります。特に、「手紙を書く青衣の女」は修復完了後の世界初公開ということで、鮮やかに再現された“フェルメール・ブルー”を鑑賞することができます。X線調査の結果なども説明されていて、フェルメールが細かな修正を施していたことや、今回の修正でこれまで見えなかった部分がクリアーになり、細部のニュアンスが可能な限り甦ったことが解説されています。

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く青衣の女」
1663-64年頃  アムステルダム国立美術館

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」
1665年頃  ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女と召使い」
1670年頃  アイルランド・ナショナル・ギャラリー

大航海時代のオランダは手紙が大切なコミュニケーション・ツールとなっていて、当時のヨーロッパの中でも最も識字率の高い地域のひとつだったそうです。手紙をテーマにした作品の裏にあるドラマを想像するのも面白いのではないでしょうか。

最後は「職業上の、あるいは学術的コミュニケーション」というちょっと小難しいテーマ。要するに、学ぶということ、また仕事を通じてのコミュニケーションにスポットを当てているといっていいでしょう。このヤン・リーフェンスは、レンブラントと同じくベーテル・ラストマンに師事しており、レンブラントとも一時期共同の工房を持ったこともあることから、作品もどこか似通ったところが感じられ、興味深く思いました。

ヤン・リーフェンス「机に向かう簿記係」
1629年頃 個人蔵

フェルメールの展示会というと、大概、フェルメールの周囲の、同時代のオランダの画家の作品が一緒に展示されるのが通例ですが、今回の展覧会は、コミュニケーションや絆といったテーマに絞り、企画されたという点でユニークなものだったと思います。


【フェルメールからのラブレター展】
2012年3月14日(水)まで
東急Bunkamura ザ・ミュージアムにて
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