2014/02/08

野見山暁治展 いつかは会える

ニューオータニ美術館で開催中の『野見山暁治展 いつかは会える』に行ってきました。

現在94歳。いまも現役で活動を続ける日本を代表する画家・野見山暁治。本展は、2008年に開業した東京メトロ副都心線の明治神宮前駅に飾られているステンドグラス「いつかは会える」や、JR博多駅にある「海の向こうから」、同じく福岡空港国際線ターミナルの「そらの港」の3点のステンドグラス作品の原画をはじめ、ここ10年程の近作を中心とした展覧会です。

もうかれこれ10年ぐらい前に東京国立近代美術館で開催された『野見山暁治展』を観ているのですが、あのときでさえ既に齢80を越えていて、元気な方だなと感心していたのですが、それが今も変わらず精力的に作品を発表しつづけているのだから驚きです。

会場はステンドグラスの原画ごとに、≪いつかは会える≫,、≪海の向こうから≫、≪そらの港≫と章を分け、それそれの作品と同時期に描かれた作品を併せて展示しています。

明治神宮前駅のステンドグラスの「いつかは会える」を観たときは意外とポップな色調だなという印象を受けた記憶があるのですが、原画はステンドグラスと違って、くすんだ色というか、ローキーな感じ。ステンドグラスは光が入りますから、印象も変わってくるんでしょうね。原画の方が確かに野見山暁治らしい絵だなという気がします。

野見山暁治 「いつかは会える」(ステンドグラス原画)
2007年

野見山暁治がステンドグラスの原画を制作するようになったいきさつはよく知らないのですが、「いつかは会える」は初めてのステンドグラス作品だそうで、約1年半の歳月を要したといいます。そしてその後、博多駅や福岡空港のパブリックアートに携わるわけですが、考えてみるとそれぞれ、87歳、90歳、92歳のときに発表してるわけで、その衰えを知らぬ意欲というか挑戦力にはただただ脱帽です。

野見山暁治 「そらの港」(ステンドグラス原画)
2012年

だけどなんですね、2011年のブリヂストン美術館の展覧会を観に行かなかったものですから、野見山暁治の作品を展覧会でちゃんと観るのは10年ぶりぐらいなんですけど、その作品の変貌ぶりというか、進化というか、深化というか、そこが個人的には一番衝撃でした。

ググったら、数年前にこんなことを言ってました。「画面にひしめく形が掻き消え、痕跡さえ見当たらない空間、何かが充満した空白」を描きたいと最近は思ってると。まだまだ発展を続けそうな予感。

野見山暁治 「誰にも言うな」
2008年

展示されていた近年の作品群の中では、黒く塗りつぶされた手のひらのような形が威圧感を与える「誰にも言うな」や、青い波と白い波間のシンプルな「遠い海から」、ハート形を包むように幾重にも色がる線が印象的な「ずっとここに居る」、絵から強い意志が伝わってくるような「ぼくは信じない」あたりが印象的でした。

野見山暁治 「渋谷風景」
1938年

一番奥の部屋では、≪これまで見てきた景色≫と題し、戦前戦後の作品を中心に、野見山暁治のこれまでの足跡を振り返っています。16歳のときに描いた自画像や、美校時代のセザンヌ風の風景画、キュビズムに影響を受けていた頃の作品など15点ほどが展示されていました。たぶん以前、展覧会で観た作品もあるとは思うのですが、暗く重い色調の「骸骨」や「花と瓶」あたりが個人的には好きです。フランシス・ベーコンの立方体の枠線を思わせる作品もあり、ちょっと興味深かったです。

野見山暁治 「花と瓶」
1948年

出品数は36作品と少ないのですが、その内の半分以上がステンドグラス作品に携わる以降(つまり87歳以降!)の作品で、老いを全く感じさせないパワーに圧倒される展覧会でした。さらに研ぎ澄まされていく94歳の現役画家の“いま”が分かってとても面白かったです。

ところで、正式発表はまだないのですが、ニューオータニ美術館が閉館するとのウワサがありますが、この展覧会が最後になってしまうんでしょうか。それとも“いつかは会える”んでしょうか。気になるところです。

※その後、本展覧会をもって休館をすると正式に発表がありました。

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