2015/10/15

中国書画精華 -日本における受容と発展-

東京国立博物館の東洋館4階で行われている特集展示『中国書画精華 -日本における受容と発展-』を観てきました。

古来、日本画に大きな影響を与えてきた中国絵画。水墨画だって、花鳥画だって、禅画だって、文人画だって、もとは中国絵画なわけです。今回の特集展示は、日本における中国絵画の受容と発展に注目しながら、東博所蔵の名品を観るという企画で、南宋から明時代にかけて作品を中心に、重要文化財や国宝など大変充実した展示内容になっています。


伝・馬遠 「寒江独釣図」(重要文化財)
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

まずは南宋を代表する宮廷画家の馬遠。院体画の第一人者ですね。大きな余白のなかに詩情を込めた描き方は“馬一角”といわれ、馬遠の特徴とされています。大河にたゆたう小舟と釣糸に神経を集中させる一人の男。ゆったりとした静かな時間の流れを感じます。

梁楷 「六祖截竹図」(重要文化財)
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

梁楷 「李白吟行図」(重要文化財)
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

梁楷も南宋を代表する宮廷画家。簡略な筆で人物などを表現する減筆体で有名ですね。「六祖截竹図」も「李白吟行図」も少ない筆数で描かれ、減筆体の特徴が良く出ています。「六祖截竹図」は本来は三井記念美術館所蔵の「六祖破経図」と対幅で、昨年の『東山御物の美』で二幅が並んで限定公開されていたのは記憶に新しいところです。梁楷は水墨人物画など日本画に大きな影響を与え、東山御物の唐絵(中国絵画)の中でも最上とされたといいます。後期展示(10/27~)には国宝の「出山釈迦図」と「雪景山水図」が並びます。これも見ものです。

伝・夏珪 「山水図」
元時代・13世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

伝・夏珪 「山水図(唐絵手鑑「筆耕園」の内)」(重要文化財)
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

夏珪も馬遠とともに南宋四大家の一人と並び称される南宋院体画の代表的な絵師。雪舟に大きな影響を与えたことでも知られています。「馬遠の「筆」に対して「墨」,とくに滋潤な墨色の美しさを最大の特色とした」と解説されていました。対幅の山水図と手鑑の山水図の2点が出品されていて、ともに深く豊かな墨の筆触が強い墨気を感じさせ秀逸です。「筆耕園」の山水図は数ある夏珪と伝わる作品の中でも夏珪の水墨画法に最も近いのだそうです。

周全 「獅子図」
明時代・16世紀 東京国立博物館蔵(展示は10/25まで)

ほかにも、浙派を代表する画家の一人で、雪舟が師事したといわれる宮廷画家・李在の重厚な水墨画や、飄逸な画風の石恪の禅画、明時代の画院画家とされる周全の「獅子図」などが並びます。この周全の「獅子図」のインパクトといったら。気持ち悪いというか、滑稽というか。こんなけったいな獅子図は初めて観ました。一応、吉祥画らしいです。

馮子振筆 「無隠元晦あて法語」(国宝)
元時代・14世紀 東京国立博物館蔵

会場の残り半分は禅林墨跡で、南宋・元に渡った日本の禅僧によって日本に請来した中国高僧の書や、来日した中国僧が残した書が並びます。書のことはよく分からないのですが、日本の書画への影響や、茶の湯文化で広がった墨跡や古筆鑑賞の豊かな趣味の世界に思いを馳せることができます。



【中国書画精華 -日本における受容と発展-】
2015年11月29日(日)まで
東京国立博物館 東洋館8室にて


中国絵画入門 (岩波新書)中国絵画入門 (岩波新書)

0 件のコメント:

コメントを投稿