2016/09/17

驚きの明治工藝

東京藝術大学大学美術館で開催の『驚きの明治工藝』の特別内覧会に行ってまいりました。

最近、明治時代の工芸品、特に超絶技巧の作品に注目が集まっていて、しばしば展覧会が開かれていますが、今回は台湾人コレクター・宋培英氏のコレクションを集めた展覧会になります。

自在置物や根付、七宝、ビロード友禅をはじめ、漆工、金工、彫刻、陶磁器など約130点。よくまあこれだけ集めたなと感心するのですが、どれも超が付く一級品ですし、いろいろ凝ってて面白い。日本の伝統工芸が西洋化の波と殖産興業政策の中で最後の輝きを放った時代。その技術の粋を集めた“明治工藝”の世界に魅了されます。

なお、会場は一部の作品を除き撮影も可能です。会場が地下なので、フリーWi-Fiも設置されています。


第1章 写実の追求-まるで本物のように-

会場に入ると全長3メートルあるという世界最大の龍の自在置物が天井から吊るされていて、思わず声を上げてしまいます。実際に宋氏の自宅でもこんな風に天井に吊るして飾ってあるのだとか。照明が創り出す影もかっこいい。

宋義 「自在龍」 明治-昭和時代

自在置物はヘビや鷹、伊勢海老、蟹など、結構数があります。そばにはヘビの自在置物をコマ撮りで撮ったちょっとユニークな「じざいヘビ、にょろニョロ」なる映像も流されていたりします。自在蛇がどんな風に動かせるのかが分かるので参考になります。

[写真上] 宗義 「自在蛇」 明珍宗春 「自在蛇」
[写真下] 明珍吉久 「自在鯉」 明珍宗春 「自在烏」

鯱の自在置物がカッコよかった! このスチームパンク感がたまりませんね。

(無銘) 「自在鯱」 江戸時代

ホンモノと見紛うような作品もあったりします。蜆の根付なんて、知らずに手にしたら味噌汁の具にしてしまいそうなリアル感。これ、木でできています。蝉もスゴイ。体は木で、足は銀、羽は水牛の角でできているのだとか。写真が上手く撮れなかったのですが、「塩鮭」なんて素材感が物凄くあって笑いますよ。

[写真左] 平井汲哉 「蜆根付」 明治-昭和時代
[写真右] 竹江 「蝉」 明治時代

素晴らしく精緻な細工やリアルな造形を見るのも楽しいのですが、素材の意外さを知るとさらにビックリ。これ木なの?とか、これ紙でできてるの?とか、鉄もこんなになるの?とか驚くことばかり。の木彫家・宮本理三郎という方の作品がまたビックリするほど凄かった。今にもチョロチョロ動きそうなトカゲや、ピョンと飛んじゃいそうなカエル。これ木に彫ってるんですよ。

宮本理三郎 「春日 竹に蜥蜴」 昭和時代

宮本理三郎 「柄杓蛙」 昭和時代


第2章 技巧を凝らす-どこまでやるの、ここまでやるか-

明治の超絶技巧といえば、今年没後100年記念の大規模回顧展も開かれた宮川香山ですが、香山は5点ほど出品されています。高浮彫の作品は蝉がのった蓮葉水盤だけでしたが、晩年の作品でしょうか、釉下彩が美しい白磁や青磁の花瓶などが展示されています。

[写真左] 宮川香山 「染付菖蒲文花瓶」 明治-大正時代
[写真右] 宮川香山 「留蝉蓮葉水盤」「菖蒲文花瓶」「兎文鉢」 明治-大正時代

手の込んだ美しい七宝も明治工藝ならでは。革新的な明治の七宝焼を代表する並河靖之や濤川惣助、林小伝治などの繊細優美な作品が並びます。

涛川惣助 「秋草鶏図花瓶」 明治時代

太田甚之栄 「菖蒲文花瓶」 明治時代

海野勝珉の彫金の香炉、諏訪蘇山の竹の花入など、伝統の技の中にも新しさを感じます。

[写真左] 海野勝珉 「背負籠香炉」 明治-大正時代
[写真右] 諏訪蘇山 「蝸牛付竹花入」 明治-大正時代

パネルで紹介されていた山田宗光という方の鉄器もユニークでした。独自のアイディアで鉄を打出し、鉄とは思えない柔らかな線を生み出したその造形は、これまでにない新しい技術を創ろうという明治の時代の熱い思いが伝わってくるようです。

[写真左] 山田宗光 「古獣文壺」 明治時代
[写真右] 山田宗光 「紫陽花文瓶掛」 明治時代

エレベーターホールを挟んだ第二会場も盛りだくさん。

[写真左] 善拙 「猫置物古獣文壺」 江戸-明治時代
[写真右] 大島如雲 「狸置物」 明治-昭和時代

ネコやクマのかわいい置物があったかと思えば、髑髏に蛇が這う気味の悪い木彫もあります。

亮之 「髑髏に蛇」 江戸-大正時代

根付も充実。単眼鏡があるといいかもしれないですね。

[写真上] 藻泉 「魚五趣根付」 小林盛良 「三猿根付」
[写真下] (無銘) 「邯鄲夢根付」 正照 「群猿根付」

ビロード友禅もいくつか。写真と見紛うような素晴らしい作品でした。

[写真左] (無銘) 「厳島神社鳥居図壁掛」「月下港辺図壁掛」 明治時代
[写真右] (無銘) 「港湾図壁掛」 明治時代

図録にはこれまた素晴らしい象牙の彫刻が載っていたので、あれ見落としたかな?と思って、もう一周してもないので、係りの方に伺ったところ、直前まで展示予定だったが、ワシントン条約の関係で日本に持ち込めなかったのだそうです。残念。


【驚きの明治工藝】
2016年10月30日(日)まで
東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2にて


明治の細密工芸: 驚異の超絶技巧! (別冊太陽 日本のこころ 217)明治の細密工芸: 驚異の超絶技巧! (別冊太陽 日本のこころ 217)

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